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“介護小説”の風景—高齢社会と文学

『恍惚の人』をもう一度
読み返してみたくなる

“介護小説”の風景—高齢社会と文学  表紙


編集:米村みゆき
   佐々木亜紀子
出版社:森話社
単行本:299ページ
価格:2520円


介護をテーマにした小説というと、何が浮かぶだろうか?
痴呆。幻覚。徘徊。人格欠損。寝たきり。介護の世界では当たり前のように使う言葉。誰もが避けて通れない「老い」をテーマに、痴呆老人を扱ったセンセーショナルな小説といえば、1972年、有吉佐和子さんの『恍惚の人』だろう。あの頃から、老人福祉はどれほど進んだのだろうか? 有吉さんが小説で訴えたことが、どれだけ社会に反映されたのだろうかなどと、考えてしまう。


その他、身近な家族が痴呆になったら、もし自分が痴呆になったら。深刻な問題を暗くならずに読ませる名作。丹羽文雄著の『厭がらせの年齢』が描く「うめ女」も強烈だ。夜は一睡もせず、廊下を通る家族に、必ず「どなたですか」と聞く不気味さ。家の物を自分の部屋に持ち込む「盗癖」、布地と見れば切り刻む悪癖の数々・・・。
そして、最近では、記憶を失った天才数学者との愛と別れをつづった小川洋子著の「博士の愛した数式」も、新しい形の介護をテーマにした小説といえるかもしれない。


この本は、文学は介護をどのように描いてきたのか?そこに描かれた介護は、現代の私たちに何をなげかけるのか?『恍惚の人』(有吉佐和子)『厭がらせの年齢』(丹羽文夫)『瘋癲老人日記』(谷崎潤一郎)『博士の愛した数式』(小川洋子)など近現代小説に内在する高齢者介護の問題に焦点をあてている。
今読んでも、決して古さを感じない小説家の描く「老い」の世界をもう一度のぞくことで、「老い」と向かい合うヒントが得られるかもしれない。




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| 2009年10月28日 |
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