
Q:父が足腰の衰えた母を精神論で無理に鍛えようとして困っています…。
近所に住む父母を、先日訪問したところ、父(74歳)が母(72歳)を“特訓”しているのを目の当たりにし、驚きました。足腰が衰え、認知症もある母をイスに座らせ、足を前に出させて“筋力を鍛えている”そうなのですが、母の足元には華道で使う剣山が置かれているのです。 「足を下ろしたら、刺さってしまう。危ないじゃない!」と私が言うと、父は「毎日、こうして足を鍛えさせている。足を下ろせば針が刺さるが、痛い思いをしないと本気にならない」と答えます。
あまりにも母が可哀想になって抗議はしたのですが、父は「何事も、本気になれば力がつく。ボケも治る!」と言い張って聞き入れません。
このままでは、父にも母にも良くない状況だとは思いますが、どうしたらいいのか判りません…。
あくまでも、お母様に良くなってもらいたい…との一心で行っている“特訓”とは思いますが、ご本人の意志を無視し、あまつさえ苦痛や危険まで伴う行為を強要することは、決して悪意からではないにしても、やはり不適切なことであると言わざるを得ません。
これを、認知症に対する理解が、まだまだ不足している社会の現状の一端を示す事実と考えると、私も介護専門職として、責任さえ感じます…。
以前も、このコーナーで説明しましたが、
【認知症とは、加齢や様々な疾病などにより脳の機能が衰えることで、記憶や行動などに“やむを得ず”支障が生じてしまう病気です】
従って、やる気や努力などの“精神論”では対処しきれない場合が多いことはおろか、本人に過度のストレス(不安や苦痛など)を与えることにより、かえって認知症が悪化する危険があるのです。
この場合は、お父様にも強い焦りや失望がおありのようですね。最愛の伴侶を、自分の手で何とかしたい…という真剣な思いも判りますが、その伴侶から厳しい仕打ちを受けるお母様も、深い悲しみや怒りを感じているのではないでしょうか。
やはり双方のためにも、専門職によるリハビリや介護サービスに助力してもらい、お母様ご本人が心安らかに暮らせる環境を整えることが、何より適切ではないかと考えます。また、そうしたケアが功を奏し、認知症の進行や体力の衰えを緩和できるようになれば、お父様にもご苦労が少なくなり、お気持ちを和らげていただけるのでは…とも思います。
通所リハビリテーションやショートステイなど、多様な介護サービスを上手に活用したり、また、ご家庭でも認知症に対する正しい知識を学ぶことを、ぜひお勧めいたします。最寄りの行政窓口(介護保険課)や社会福祉協議会、または居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事務所)などに、お問い合わせになると良いでしょう。
回答者/社会福祉主事 佐藤弘一郎
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