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グループホーム夢観(ゆーみん)

その人らしい安らかな生活を支える素敵なマイホーム

40代も半ばを過ぎると「老い」がヒシヒシと現実的に迫ってくる。
あちこち体の不具合を訴える母親、介護が必要になった父親・・・。
そして老いていく親の姿に、30年後の自分の姿が重なる。
終の住処をどこにするか。どんな生活を選ぶか。高齢者とその家族にとって、これはマイホーム購入と同じくらい重要な人生の一大事だ。有料老人ホームをたずねながら、高齢者とその家族が安心できるシルバーライフについて考えたい。
第一回は認知症のグループホームをたずねてみた。

住宅街の一角にとけこんだプロバンス風の瀟洒な〝マイホーム

ヴィーナス・リバティ・ガイア

東急田園都市線「江田」駅から徒歩15分。閑静な住宅街の一角に現れたグループホーム夢観は、「こんなマイホームがほしい」と誰もが思うような瀟洒な建物だ。
戸建て住宅風の玄関を入るとヴィーナス棟で、この2階に居室とルーフガーデンがある。みんながくつろぎのひとときを過ごすリビングダイニングのあるフロアからは、リバティ(2階)・ガイア(1階)と行き来ができる棟続きになっている。
夏は水遊びの場になるプール、緑豊かなユニバーサルケア・ガーデンや心身を癒すハーブガーデンを囲むように建物が配されており、どの棟もリビングからの眺めは心を和ませる。そして外からは全体が南仏プロヴァンスを思わせる、一枚の絵のように見える美しい景色だ。
「入居者の中には、子どもたちが素敵な別荘をプレゼントしてくれたと思って暮らしている方もいます」と案内してくれた入居相談担当の平井さんが言うのもうなづける。

それぞれの心地よい空間

ターミナルケアまで行う夢観は、入居者にとってまさに終の住処、最後のマイホームだ。各居室には表札代わりのメモリアル・ボックスがあり、自慢の逸品や大好きなものを飾っている。これは自分の部屋を識別できるようにという認知症ケアの一つでもある。
居室はいずれも約8畳の広さのフローリングで、タンスと小さなデスクが備え付けられている。「散らかっているのよ」と言いながら快く居室を見せてくれたAさんは70代の女性だ。明るい窓際にベッドを置き、横になったときに視線が合う位置に亡夫の遺影を飾っていた。陽当たりの良いベランダには洗濯物が干してある。「自分のものは自分で洗濯したい」というAさん。主婦らしい生活感と温もりのある居室には、家庭の安らぎが感じられた。

認知症治療をケアプランの基本にその人らしい安らかな生活を支える

認知症とグループホーム

グループホームとは、要介護状態の認知症高齢者が少人数(5人から9人まで)で、スタッフに入浴、排せつ等のサポートを受けながら、一緒に食事の支度や洗濯といった家事を営むなど、家庭的な雰囲気の中で共同生活する施設だ。
アルツハイマー病や脳血管障害などの病気で脳の働きが低下し、物忘れや徘徊などいろいろな症状を起こすのが認知症だ。原因となる病気を適切に治療することで症状が軽くなるケースもある。
重度までを受け入れている夢観では、ケアマネージャーの紹介や有料老人ホーム紹介所経由など、入居までの経緯はさまざまだ。要介護度が高くなったり、医療的ケアが必要になって他施設から移ってくる例もあるという。

毎月ケアプランを作成

夢観では、入居時にMRIなど医療検査を行い、ケアプランに生かしている。脳血管障害の後遺症で失語症とされていた入居者の場合、言葉を司る左脳には損傷が見られないことが判明した。そこで言語機能のリハビリに取り組んだところ、意思の疎通が図れるようになったという。
このように医療的所見から認知症の進行を抑制し、残存機能を生かすことを基本にケアプランを作成し、「入居者の状態に応じて毎月ケアプランを見直す」のが夢観のやり方だ。

ピアノもペットもOK

一人ひとりケアプランの内容が異なるので、日々の暮らしのリズムもゆったりしている。食事の時間はみんなそろってだが、それ以外はそれぞれのペースで進む。朝食前に屋上ガーデンやハーブガーデンで草花の手入れをする人もいれば、散歩をする人もいる。取材当日は昼食前に満開の梅を見に散歩に出かけた入居者もいた。
大人になってからピアノを習ったという女性Bさんは、電子ピアノを部屋に置き、毎日ピアノを弾きながら明るい歌声を響かせている。居室への持ち込み制限のない夢観は、ピアノばかりかペットもOKだ。かつて愛猫を伴って入居した事例もあったという。現在はアニマル・セラピーの一環で、介護犬たちがペットとして各棟に同居している。
生命力にあふれる愛らしいペットの存在は、入居者にも働くスタッフにも、心の安らぎを与えてくれるようだ。

夢観とレストランが誕生したわけ

きっかけは自身の介護体験

取材中に「あなたの親御さんをこの施設に入居させたいと思いますか?」と働くスタッフに尋ねてみた。誰もが異口同音に「ここだったら安心して預けられます」と答えた。その表情には、自分の仕事に誇りを持っている様子がうかがえる。
夢観を設立・運営しているのは株式会社横浜福祉研究所だ。代表の宮田真由美さんは看護師だったが、親の介護に直面したときにその大変さや良質なケア施設の少なさなどを痛切に実感した。この体験がきっかけで「お年寄りがありのままで地域に根付いた楽しい生活を続けられるよう支援したい、認知症になっても安心して楽しめる環境づくりを進めたい」とグループホーム夢観を始めた。
写真は左から長濱さん(鍼灸師)、宮田代表、梶原さん(施設長)、内藤さん(管理栄養士)

ニーズから広がる部門

まだ全てが解明されていない認知症は、そのケアも進化の過程にある。夢観は科学的根拠に基づいたケアを実践するために、さまざまな取り組みを行っている。その一つが栄養療法だ。開設当初、入居者全員の爪を分析し、認知症と栄養バランスの関係に着目した。
夢観では、管理栄養士が心身を健やかにする栄養バランスのよい食生活を組み立てている。これを発展させて「身体と心を潤し、楽しく交流ができたら元気が出る」料理を“コンディショナル料理”と名付け、夢観の隣にオープンしたのがレストラン「レールピュール」だ。
例えば4月のテーマは「腸内環境」というように毎月変わる食のテーマも直球型だ。刻み食や糖尿病食などにも対応しているうえに、認知症の高齢者を伴って外食ができるレストランとして知られるようになった。

データブック

ホーム名:グループホーム夢観
事業者:株式会社横浜福祉研究所
住所:224-0007 神奈川県横浜市都筑区荏田南3丁目14番1号
電話:045-914-7001
FAX:045-914-7007
利用料:介護保険/一割負担、入居一時金/200万円、入居後月額費用(実費相当分)/28万円〜
定員:1ユニット9名(全3ユニット)
URL:http://www.ywi.jp/inline1.htm

取材を終えて

老人ホーム入居を決めるのは高齢者だけではない。老人ホーム側も「受け入れられるか(しっかり介護できるか)」検討した上で諾否を出すのだ。夢観の場合、希望者の生活拠点まで赴き、その人の暮らしぶりや状態を確認する。認知症にもさまざまな症状があり、医療が必要なケースもある。こうした「初めて」の事例は、責任を持ってケアできるかどうか慎重に検討するという。そして入居後は、付属の認知症高齢者研究室と連携し、研究と臨床実践の両面で介護の技術を高めて来た。また、そうした成果を学会で発表することで、介護知識や技術の普及に努めているという。夢観が素晴らしいのは、建物や設備ではなく、実はこうした科学的根拠に基づいて入居者一人ひとりに応じたケアを実践していることだろう。認知症は病気だ。進行を遅らせたり、症状を改善する治療・介護方法がある。夢観で知ったこの事実に、とても勇気づけられる思いがした。「この費用でこれだけ手厚いケアを受けられるのは安い」という入居者の家族が多いというのも納得できる。ここだったら自分が入居したいと思った。ただ、入居後の費用が毎月28万円以上というのは、私の経済力ではまかなえない。親ではなく自分の身に置き換えて、老後の資金計画の重要性をしみじみと実感した。

取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)

早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。


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| 2007年04月02日 |
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