
デイサービスセンター健康倶楽部多賀城
利用者の笑顔が輝く「社会参加の場」

前回に続いて宮城県からのリポートだ。
ただし、老人ホームではなくデイサービスをご紹介する。
老人ホームは居住・生活型の介護施設だが
デイサービスは利用者が施設に通い、
入浴や食事などの介護サービスを受ける通所型介護施設だ。
歌やゲームなどのお楽しみプログラムを通して、
高齢者の心のケアや身体機能回復を図り、
同時に介護する家族のリフレッシュや負担を軽減する。
老人ホーム、医療機関、介護老人保健施設などに
併設されている施設も少なくない。
今回はグループホームゆうゆう・多賀城の隣にある
デイサービスセンター健康倶楽部多賀城を訪ねてみた。
幸福な記憶を刻み付ける「笑顔の記録」
●高齢者に楽しいひとときを●
デイサービスセンター健康倶楽部多賀城の運営母体は、「健康倶楽部」などのブランドで、デイサービス、グループホーム、居宅支援など高齢者向けの介護サービスを提供している株式会社アルテディア。実際、前回ご紹介したグループホームゆうゆう・多賀城と、隣り合って建っている。
それぞれ独立した施設だが、連携体制が整えられている。デイサービスで外部から講師を招いたカルチャープログラムに、グループホームの入居者が参加することもあるし、デイサービスの利用者がグループホームに入居することも多くあるという。運営母体が同じであるということは、利用者が慣れ親しんだ質の高い「サービスの継続性」という利点があるようだ。
そのサービスだが、デイサービスセンター健康倶楽部多賀城では、通ってきた高齢者が「今日は楽しい一日だった」と満足できる、そんな楽しいひとときをつくりだすことを目標に、スタッフが一丸となっている。その一例が「笑顔の記録」だ。

頭脳体操をリードする職員の笑顔も元気いっぱい! この健康的な明るさが高齢者の心を太陽のように照らす
●輝く笑顔をアルバムに●
「お客様の笑顔をデジタルカメラで撮影し、コメントを添えてお持ち帰りいただいています。また、ファイリングした写真はこちらで記録として残すだけでなく、担当のケアマネージャーにも届けています」と話してくれたのは、デイサービスセンター健康倶楽部多賀城の施設長・及川恵子さんだ。
子どもの頃は成長の様子を親がスナップショットしてくれる。だが、高齢になると、旅行などのイベントでもない限り、被写体になる機会はないだろう。しかも、介護が必要になれば、そうしたイベント参加自体も減っていく。「以前、お客様が亡くなられご焼香に伺った際、遺影がデイでのものでした」という及川さんをはじめとして、職員全員が写真を撮ることの意義深さを真摯に受け止めている。
笑顔は、その人生に幸福なひとときがあったことを記憶に刻み付けてくれる。「皆様に心地よい時間を過ごしていただき、そのひとときの笑顔を大切にしたいと思っています」と及川さんは優しい笑顔を見せた。

「今日の笑顔」をファイルに貼付ける職員。こうした積み重ねで「笑顔のアルバム」が出来上がる。
元気な笑顔が生まれるプログラム
●選べる「静と動」のプロフラム●
職員たちは代わる代わるデジタルカメラを持って、「笑顔」のシャッターチャンスを狙う。とくに午後のメインプログラムの実践中は、笑顔が広がり、明るい笑い声が弾む。午後のメインプログラムに楽しく参加することは、高齢者の心のケアや身体機能の回復も図ることになる。
ここでは午前9時頃から到着順に利用者にウエルカムドリンクを供する。コーヒー、紅茶、緑茶など、好みの飲み物で一服すると、脈や血圧などを測定。その後、順番にお風呂タイムを楽しむ。「午前中は入浴で中断することもあるので、集団ではなく個々人で楽しむ頭脳体操を用意しています。難読漢字、書き取り、計算問題など常に5種類。一人ひとりが得意なもので達成感を味わえるように配慮しています」と及川さんは説明する。
昼食に続く午後のプログラムも同様で、取材当日は「風鈴作り」と「ゲーム」の2種類あり、利用者は好きな方を選んで参加していた。談笑しながら、ゆっくりと手を動かす風鈴作り。ワイワイとにぎやかな歓声が飛び交うゲーム。まさに“静と動”だ。だが、共通しているのは、利用者たちの笑顔。楽しいプログラムに自ら参加している、という充足感が、その源にあるのではないだろうか。


“静と動”の風景。左は風鈴作り、下はゲームに講じている高齢者たち
●楽しいカルチャーセンター●
こうした「選べるプログラム」に力を入れているのは、誰もが参加できる、誰もが楽しいひとときを過ごせる、そういう場にしたいからだ。「プログラムは前々月に作成します」というだけあって、内容は豊富だ。例えば、若かりし頃の思い出につながる名画鑑賞会、2チームに分かれて3種目のゲームで得点を競うスポーツ大会、お花見や紅葉狩りなどの外出、みんなの好きな歌に合わせて体操するレクリエーションダンス、オリジナルのおやつ作りに挑戦するクッキングなどなど……、という多彩な内容だ。また、開設時から合唱や合奏を楽しむ音楽療法にも取り組んでおり、人気プログラムだという。
この施設を立ち上げるときの目標の一つが「カルチャースクールのようなデイサービス」だったという。ただ漫然と通ってくるのではなく、楽しく通う目的を持てるようにしたかったからだ。というのも、加齢によって高齢者はさまざまな自立した自由を失う。その一つが外出だ。一人では移動が難しい、あるいはどこにも出かける当てがない……。自宅に引きこもってしまう高齢者は少なくないのだ。
「初めて利用する方には無料体験をしていただくのですが、その人の好みにあったプログラムの日に参加していただきます。楽しさを実感すると、また来たいって思ってくれますから」と及川さんはいう。実際、ここで出会って友達の輪が広がる例が多いという。カルチャースクールみたいなデイサービスは、高齢者の新しい交流の場でもあるのだ。

塗り絵は頭脳体操の人気プログラムだ。額を寄せ合って色の相談をする「友達同士」。いくつになっても友達ができるのはうれしい。
殿様気分になれる入浴と滋味豊かな食事
●檜風呂で「殿様になった気分」●
デイサービスセンター健康倶楽部多賀城の定員は40人。お盆など家族と過ごす時期や寒さが募る雪の時期には少なくなるが、1日の平均利用者数はほぼ定員に近い30数人だ。要介護度の平均は2.5度で、1〜2が多く、5の人もいる。当日の身体状況の関係で各種プログラムに参加できない場合は、静養室でゆっくり休む。だが、自宅で一人きりで寝ているのとは違い、職員やほかの利用者との接触が精神的な刺激になる。不眠を訴える高齢者が「デイに行くとよく眠れる」というのも、こうしたコミュニケーションの賜物だろう。
一人ひとりの利用回数も介護度も異なるが、共通の楽しみはお風呂タイムだ。ここでは「お風呂いかがですか?」と利用者の意向を聞く声かけを行い、順番に浴室に案内している。すべて個浴で、1回ずつ湯を取り替える。だから利用者の希望に応じて入浴剤の使用もOKだ。「熱めがいいとか、ぬるめの38度がいいとか、お客様のデータをすべて管理しているので、お好みの入浴環境を整えるようにしています。清潔ケアというだけでなく、気持ちがリラックスできるような、お風呂の時間を楽しんでいただきたいからです」と及川さんはいう。利用者に特に人気なのが檜の浴槽だ。
「ほかに出かけるところがないから、ここに来る以外は、家でゴロゴロしている」という71歳の男性は、介護度1だが、それ以上状態が悪化しないように、生活機能の維持・向上を図るため、デイサービスに通い始めたばかりだ。「ここに来るのは楽しいよ。体操もできるし、お風呂にも入れるからね。檜風呂に入ると殿様みたいな気分になるから」と笑顔をほころばせる。

先の浴槽が並ぶ浴室。人気の檜風呂は公平に順番に。好みや身体状況を考慮しながら、職員たちは心地よいお風呂タイムを提供している。
● 心の栄養にもなる滋味豊かな食卓●
お風呂のほかにも利用者が心待ちにしている時間がある。ランチタイムだ。その日のメニューは、小さな黒板に書かれた「おしながき」に記されている。取材当日のメニューは「三色丼、みそ汁、なすとえびのあんかけ、胡瓜とカニの酢の物、漬け物、メロン」だった。ちなみに3時のおやつは「水ようかん」。

これが取材当日のランチメニュー。作り手の愛情と誠実さを感じさせる滋味豊かな食事だ。
どれも栄養士がメニューを組み立て、調理担当職員と共に計3人で手作りしたものだ。彩りよく盛られた料理は美しく、家庭料理よりも洗練されている。高齢者向けに少し柔らかめのごはんや、だしのうまみが生きているみそ汁には、家庭的な温もりが感じられる。引きこもりがちの高齢者にとっては、食べやすく、しかも外食気分が楽しめる、優しい味わいだ。口福は幸福に通じる。おいしい笑顔を見ながら、そう感じた。
「自分の親をここに呼べるだろうか。これが職員一同の基本です」と及川さんはいう。通って来る高齢者の一人ひとりを温かくもてなすような、そんな慈愛が感じられる光景を見ていると、細やかな配慮と親身なケアを生み出す職員たちの「真摯な志」を実感する。私もここなら親を通わせたい。そんな思いを心に抱きながら帰途についた。
データブック
ホーム名:デイサービスセンター健康倶楽部多賀城
事業主:株式会社 アルテディア
運営主:株式会社 アルテディア
住所:宮城県多賀城市高崎3-29-1
電話:022-389-2412
FAX:022-309-3778
定員:40名
構造規模:鉄骨造 平屋建
施設概要:デイルーム(食堂・機能訓練室)・和室・理美容コーナー・静養室・相談室・くつろぎコーナー・浴室・ 脱衣室・トイレ・厨房・事務室・サービスカウンター
定員:40名
営業日:月曜〜土曜
営業時間: 8:30〜17:30
サービス提供時間: 9:45〜16:15
利用料:介護度に応じて1日あたり6080円(要支援)から11250円(要介護5度)まで。自己負担額は608円から1125円まで。このほかに、個別機能訓練、入浴介助、延長など利用ないように応じて料金が加算される。食事に関わる費用は一律で、1食650円(税込み)。プログラム参加材料費などは必要に応じて実費負担となる。
ホームページ:http://www.altidea.com/
●取材を終えて●
高齢者介護ではADLという言葉がよく出て来る。activities of daily livingの略語で、「日常生活動作能力」という意味だ。摂食・着脱衣・排泄などは、人間の基本的な日常生活動作だが、加齢によって次第に衰える。だから、介助・介護が必要になるわけだ。今回の取材で胸を打たれたのは、介助・介護が必要になると、外出もままならないということだった。
ちょっと買い物に。犬の散歩に。友達とグルメランチに。気軽に、当たり前のように出かけているが、これも若くて(高齢者に比べて!)元気だからできること。しかも、高齢者の場合、一人欠け二人欠けと、次第に仲間を見送って、気軽に合える友達さえ減っていくのだ。「ここ以外、行くところがない」という言葉は痛切だ。
デイサービスの多くは送迎サービス付きだ。引きこもらざるを得ない高齢者にとって、移動の安全が確保されていて、たくさんの人々に出会える「デイサービスに通う」ということは、本当に大切な社会参加の機会なのだと実感した。
取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)
早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。
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