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グループホームゆうゆう・多賀城

入居者の表情が生き生きとしている「みんなの家」

グループホームゆうゆう・多賀城

立派な施設よりも、高邁な理念よりも、もっと大切なのは
実際に入居者がそこで生き生きと暮らしているか、ということだ。
杜の都・仙台の近くに、
明るい歌声が響き、おだやかな笑顔があふれる、
認知症対応型共同生活介護施設を見つけた。
2003年にオープンした「グループホームゆうゆう・多賀城」だ。
今回は首都圏から飛び出して、地方の有料老人ホームを訪ねてみた。

受容〜あるがままを受け入れる

●首都圏から日帰り圏内にある老人ホーム●

 東京駅で朝7時半、東北新幹線「はやて」に乗る。目指すは杜の都・仙台のお隣、多賀城市。奈良・平安時代には、東北地方の政治・軍事・文化の中心地だったが、今は仙台のベッドタウンだ。

 仙台から仙石線に乗り換えて、多賀城駅で降りる。「グループホームゆうゆう・多賀城」は多賀城駅から10分と聞いていたが、奮発してタクシーを利用した。おかげで午前10時には目的地に到着。コの字型の平屋建て3棟は、住宅街にとけ込んで、静かなたたずまいを見せていた。

掘りごたつの居間
廊下でつながっている「ふじ」「もえぎ」「もも」の3棟はそれぞれ独立した玄関を持ち、入るとすぐに掘りごたつの居間がある。

 運営母体は株式会社アルテディア。「健康倶楽部」などのブランドで、デイサービス、グループホーム、居宅支援など高齢者向けの介護サービスを提供している企業だ。社名のアルテディアとは、ラテン語の「より高く」を意味する Altius (アルティウス)と「理想」を意味する Idea (イデア)を合わせてできた造語で、「より高い理想」の実践を目指すことを決意表明しているようだ。

●「はい、私が女将です」●

 グループホームとは、介護を必要とする認知症の高齢者が共同生活を営みながら、介護その他の日常生活上必要な世話や機能訓練を受ける場だ。「グループホームゆうゆう・多賀城」は、定員9人のユニットが三つ。合計定員27人だが、取材時点での入居者は26人で、そのうち男性が4人、全体の平均年齢83.5歳だ。また、入居を待ついわゆる待機者は7人だという。

ジャガイモの皮むき風景
昼食のシチューにするジャガイモの皮むきは、まさに生活リハビリ。

入居者の作品
入居者たちのすてきな作品の数々がリビングに飾られている。

 施設長の松本さんは、2003年設立時から勤務している。「あるがままに受け入れる」ということは、入居者に学んだことだという。「認知症の方は、独自の世界でその人らしく生きています。私たちが自分の物差しや目線で決めつけていたら、その世界を否定することになります。一人ひとり違う世界を持っているのは、個性。その個性を生かしたケアをしていきたい。そう考えています」と松本さんは笑顔で、しかし真摯に思いを語る。

 あるがままに受け入れる。その一例が、女将になることだ。ある入居者は、ときどき職員に対して「女将をよびなさい!」という。その瞬間は、旅館に長逗留しているお客様気分になっているのだ。職員もそのことを理解しているので、「いいえ、ここは旅館じゃないですから」などと野暮なことはいわない。旅館のお客様気分になっているときは何か個人的に話したいことがあるとき、と理解しているのだ。松本さんも「はい、私が女将でございます」と笑顔で居室に出向き、入居者の言葉、その根底にある気持ちを受け止める。話を聞き終える頃には、気持ちも落ち着くのだろう。客と女将ではなく、入居者と施設長の関係に戻っている。

ホーム内廊下非常用持ち出し袋
旅館、別荘、アパート・・・。入居者が「グループホームゆうゆう・多賀城」をどんなふうに考えているのか、一人ひとり異なる。共通しているのは、「今、自分が暮らしている心地よい場所」という意識だ。

日常〜心地よい生活感にあふれた光景

●3棟3様の「家庭の味」●

 起床時間はそれぞれだが、3棟とも午前7時に朝食だ。当初は8時だったが、入居者の生活のリズムが自然にできあがり、この時間になったという。その後、午前中は健康チェック(バイタル測定)、散歩、学習などのプログラムで過ぎる。

 「何ができるのだろう」「どういうことが好きなのだろう」。職員たちは、入居者の残存能力を生かし、充足感を得られる機会を設けるように工夫している。電卓操作の苦手な職員は、計算の確認を、そろばんの達人にお願いすることもある。一方、元調理師の入居者は、料理で大活躍だ。職員と一緒に、抜群の包丁さばきで手際よく料理を作り上げて行く。

 3度の食事は職員を中心にみんなで作って食べる。3〜4日に1度、みんなで近所のスーパーに買い物に行って、なるべく体にいいものを選ぶ。その材料で、「今日は何を作って食べようか」とメニューを決める。こんなふうに、ごく普通の家庭と同じ光景がここでは見られるのだ。

 だが、基本的に調理参加は自由意志。歌いたい気分のグループは、「今日はあんかけ焼きそばがいいねえ」とメニューだけ決めたら、こぶしをきかせながら大きな声で民謡を歌って楽しい時間を過ごしている。フライパンを片手に調理を担当するのは男性職員だ。ときには「今日はピザが食べたい」というリクエストに応じて、ケータリングを利用することもあるという。

あんかけ焼きそば、中華スープ、フルーツ
うどん、香の物、酢の物
ピラフ、シチュー、サラダ、ジュース
本日のランチ。上から順に「あんかけ焼きそば、中華スープ、フルーツ」「うどん、香の物、酢の物」「ピラフ、シチュー、サラダ、ジュース」。3棟3様、家庭的な味わいだ。この素朴なおいしさが、家庭の温もりに通じる。

●これが「私のお城」●

 各棟の中心になっているのは、キッチンに続くリビングダイニングだ。大きな丸い木のテーブルを囲んで、ジャガイモの皮を向く人、新聞を読む人、塗り絵をする人…それぞれにゆったりとしたひとときを過ごす。

 各自の居室と団らんの場をつなぐのは、手すりのついた広い廊下だ。和室3室と洋室が6室。いずれも6帖というが、もっと広く感じられた。エアコン、クローゼット、洗面台が基本の設備だ。持ち込む荷物の制限はない。「なるべく家庭で愛用していたものを」と、職員は入居者の家族に伝えている。アニマルセラピーも取り入れているだけあって、愛するペットを連れての入居もOKだ。

 80代の女性は、「散らかっておりますが」といいながら、笑顔で居室に招き入れてくれた。部屋の中央にちゃぶ台を置き、新聞の切り抜きをしたり手紙を書いたりするのが趣味だという。自身の手で窓際に干した洗濯物、タンスの上に所狭しと並んだ愛用の品々。雑然としているが、そこはまぎれもなく「私のお城」だった。自分の居場所がある。このことが、入居者たちが生き生きとしている理由ではないか。そんな気がした。

ある利用者の居室
自分らしく暮らすマイホーム。同じ規格でも住まう人の個性で違う空間になる。

ひととき〜みんなで過ごす時間と一人の時間

●「独り占め」して甘えたい●

 各棟の浴室は、少し広めの家庭用ユニットバスだ。浴室内に手すりがあり、入浴用介助用の椅子が置かれている。週に何回と入浴のルールを設けている施設が多いけれど、ここは好きなときに入れる。そんなところも、「自分のおうち」感覚だ。

浴室

 もちろん、職員が介助するが、自立の度合いに応じて、浴室で事細かに介助するケースから脱衣所で待機見守りというケースまでいろいろだ。共通しているのは「お風呂タイムは、職員を独り占めできる至福のとき」であるということ。甘えは、兄弟がお母さんを独り占めしたがるのと同じ心理のようだ。

 公平に接するのが原則であり、職員はそれを実践している。しかし、子どもに戻ったようなそんな入居者の甘える気持ちも、あるがままに受け入れる。入浴は、体を清潔にするだけではない。そんな心のケアの場でもあるのだ。

浴室の懐メロCD
一人で入浴時間を満喫する「個浴」のBGMは好みの「懐かしのメロディー」

●小さな癒しの空間●

 独自の世界を持つ認知症は、ともすると「何もわからない」と誤解されがちだ。自分が認知症という病気であることを知ったときの驚愕、動揺、悔しさ、諦観・・・。住み慣れた家を離れることの不安。新しい出会いの喜び。職員への甘え。いろいろな感情を抱えているのだ。

ホームの一角にある庭

 「グループホームゆうゆう・多賀城」の一角に、季節を彩る草花や野菜を植えた小さな庭がある。木のベンチが置かれたその空間は「入居者がひとりで心のままに過ごせる癒しの空間です」と施設長の松本さんはいう。居室だけではなく、陽光を浴び、風に吹かれながら、一人になれる居心地のよい場所がある。それが、入居者の心の平安にもつながるというわけだ。

 「グループホームゆうゆう・多賀城」で感じた心地よさは、家庭でくつろぐときの心地よさに似ている。それは、共同生活と個の空間、時間を、職員たちが上手にバランスを整えながら保っているからだろう。認知症に最も必要な「心のケア」の大切さを、ここでは実践されている。取材しながらも、その心地よさが伝わる幸福なひとときだった。

データブック

ホーム名:グループホームゆうゆう・多賀城
事業主:株式会社 アルテディア
運営主:株式会社 アルテディア
住所:宮城県多賀城市高崎3-29-1
電話:022-389-2406
FAX:022-309-3778
定員:27名
構造規模:鉄骨造 平屋建
居室設備:全室個室(クローゼット・洗面台・冷暖房完備 )
共用施設・設備:食堂・居間・台所・リビングルーム・ 浴室・トイレ・洗濯室
月額利用料/利用者負担金は介護度に応じて1日にあたり831円から900円まで。食事に関わる費用は一律で、食材料日1日1080円、おやつ代1日120円。管理費も一律で、家賃1ヶ月68000円、光熱水費1ヶ月15000円、共用経費1ヶ月10000円。1ヶ月30日として自己負担額は153930円〜156000円。
ホームページ:http://www.altidea.com/

●取材を終えて●

 毎回「ここは自分の親を預けられるだろうか」と思って取材を始めるのだが、いつの間にか「ここなら自分が入居して満足できるだろうか」になっている。何しろ未だに嫁入り前なので、ひとりぼっちの老後が待ち受けているのだ。つい、切実になる。

 設備その他の条件は、時代の流れと共に変わって行くはず。そうなると、食い意地が張っているので、おのずと普遍的な入居条件として「食事」に関心が行く。外部委託で専門業者がまかなっているところ、調理部門を持つところ、施設によって調理形態はさまざまだ。取材のたびに気になっていたのは、うまいかどうかもさることながら、その味わいになじんで暮らせるかどうか、という一点。しかも、入居者の大半は女性であり、そのほとんどがベテラン主婦だったのだ。

 そこで、今回は、見るだけでなく、撮影後に試食をさせてもらった。男性職員が作った料理、職員と入居者との合作。和洋中のメニュー。3棟3様の味わいなのだが、いずれも「家庭の味」というのが共通点だった。優しい味わいで、おいしかった! 3メニューすべて完食したかったが、大食漢であるのがばれると恥ずかしいので味見程度にとどめたのが悔やまれる。もっと食べたかったなあ。そして思うのだ。飽きのこない、こういう家庭の味ならば、元ベテラン主婦でも楽しく味わえるだろうと。

 食事に象徴されるように、「グループホームゆうゆう・多賀城」は、家庭的な要素があふれている。そこが、いい。ここなら自分が入居しても満足できると思った。

取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)

早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。


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| 2007年08月01日 |
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