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ボンセジュール中野島

質の高いサービスを提供するための理念と実践に注目

ボンセジュール中野島全景

東京都と神奈川県の境を流れる多摩川。
その流れに寄り添うように走っているのが
立川(東京)と川崎(神奈川)を結ぶJR南武線だ。
平成18年春にオープンしたボンセジュール中野島は
そのJR南武線・中野島駅から徒歩3分という交通至便な場所にある。
かつては多摩川梨の産地として知られていたが
マンションが立ち並ぶ今は、子育て世代に人気の住宅街だ。
そこに誕生した老人ホームはどのように地元に溶け込んでいるのだろうか。
その入居者たちはどのような暮らしをしているのだろうか。
答えを探しにボンセジュール中野島を訪ねてみた。

元気な小学校の隣にある静かな老人ホーム

● ボンセジュール●

 なんだかフランス語っぽい感じの名前だ。それもそのはず、フランス語の「幸福にあふれた」という」意味のボンと、「居場所」という意味のセジュールを合体させて、入居者にとって「幸福にあふれた居場所をつくりたい」という願いをこめたのだそうだ。

 介護が必要な高齢者のために「幸福にあふれた居場所」をつくっているのは、株式会社ゼクスコミュニティ。同社は首都圏を中心に数多くの有料老人ホームを運営している。ボンセジュールはそのブランド名だ。

エントランスと屋上庭園
写真左の駐車場も完備されたエントランスは季節を彩る緑も豊か。
写真右は屋上庭園。ここからは多摩川の花火大会もよく見える。

● 新しい環境の中で生活の根を下ろす●

 ボンセジュール中野島は平成18年春にオープンしたばかりだが、すっかり地元に溶け込んでいる。いつも子どもたちの元気な声が聞こえるお隣の中野島小学校からは運動会に招かれ、近くの幼稚園の園児たちとの交流もあるという。

 入居者の平均年齢は82歳。女性の方が多い。大半は東京都内、その近郊の横浜市や川崎市から入居している。昨秋から入居している80歳の女性は、南武線沿線に住んでいた。「大腿骨骨折のために入院手術したのですが、その後の生活が大変で。自分で老人ホームに入ろうと決めました。ただ、私自身は歩くのも大変なので、息子に頼んで探してもらい、新しくて自宅から来るにも便利なここに決めました」と入居までの経緯を話してくれた。

介護者が利用者の手を握る
入居者が安心できる介護サービス。その象徴が「きずな」だ。

バリアフリーな廊下

 病気やけがの後遺症で歩くのが不自由になった高齢者にとって、バリアフリーというのは大きな安心感につながるようだ。廊下にはすべて手すりがつき、両側に居室が並んでいる。「自宅と違って、ここなら私でも歩けますから。リハビリのつもりで、歩くといいんですよね」と笑顔を見せる。「先日、田舎で法事に出席しましてね。車で出かけるとはいえ、歩けるかしら、迷惑かけないかしらと心配しましたが、無事に過ごせました。ちょっと自信がつきました」とうれしそうに話していた。

 食事と介護のサービスがついた住まいに移り住んだ高齢者もまた、新しい環境の中で、少しずつ生活の根を下ろしているようだ。

心地よい生活を実現するための運営方針と設備

● 入居者にとっての重要イベント●

 「行事を多彩にして、暮らしを楽しむ」を運営方針としている。各階のラウンジの壁には毎月「行事カレンダー」が貼られているのだが、毎日必ず一つはイベントがあり、入居者の生活の張りになっている。一階のラウンジでクリスマス会や運動会まで開催するほどだ。


健康管理室付近

 午前10時。1階フロアの健康管理室付近にたくさんの入居者がいた。なんのイベントがあるのだろうか? 「実は、今日は内科の受診日なのです。順番がくるまで自室で過ごしていてもいいのですが、みなさんここに来て待っているのですよ」と施設長の佐藤さんが説明してくれた。

診療中の様子

 ボンセジュール中野島では、協力医療機関による訪問診療やリハビリを定期的に受けられる。また、近隣医療機関への送迎サービスもある。こうした日常的な健康管理は、お楽しみ行事とはまた別の意味で、入居者にとって重要なイベントなのだ。毎週月曜と木曜は内科、水曜は歯科の訪問診療の日。

●居室と共用施設●

単身者用居室

 建物は4階建てで、3階と4階には、夫婦で入居できる36平方メートルほどの二人部屋が2に室ある。ほかは18平方メートルくらいの単身者用だが、一部はご夫婦用のコネクティングルームになっている。いずれも入り口は開き戸で、立派な表札が飾られていた。写真は単身者用の居室。

 居室内は床に段差がなく、エアコンが完備されている。全居室がブロードバンド対応の快適な通信環境を整えているのは、さすが21世紀の老人ホームだ。ベッドサイドとトイレの計二ヶ所に、ナースコールが設置されている。洗面台がトイレの外側にあるのは、飲料水としての用途もあるからだ。ちなみに共有スペースは禁煙。ただし、1階の奥には喫煙所がある。各自の居室内も禁煙だが、お酒は健康に害を及ぼさない限り、適量であれば楽しむことができる。

各フロアのラウンジ
各フロアのラウンジはゆったり座れるソファが置かれたくつろぎの場所。

心地よい生活を実現するための設備と介護の力

● お風呂タイムを満喫する●

 介護を要する高齢者が、自宅ではなく老人ホームを終の住み処とする大きな理由が、食事と入浴だ。

 入浴は週2回。各フロアの浴室で、介護度に応じた介助をしながら行う。機械浴などの設備もあるが、ボンセジュール中野島の自慢は、家庭用の浴槽と同じくらいの大きさで、一人ずつ入る「個浴」があること。自分のペースで、ゆっくりと、お風呂の時間を楽しむ入居者が多いそうだ。

個浴室と機械浴室
写真左は、自宅にいるような気分で、一人で浴槽に入る「個浴」。
写真右は、体が不自由でも全身をゆったりと湯船に入れられる機械浴

●介護の力が光る食事タイム●

 「朝食は7時半、昼食は11時半、夕食は17時半から、それぞれ2時間の食事タイム内に自由に召し上がっていただきます」という。だが、実際にはみなさん待ちかねた様子で、食事時間の少し前から食堂で待っている。

食事風景

 入居者全員にお茶を供し、1階の調理室から届いた食事を配膳する職員たち。食前食後の服薬管理も重要な介護サービスの一つだ。職員たちは忙しく、その表情は真剣だ。だが、入居者に向けるのは笑顔だ。認知症と思われる入居者が、何度も同じ質問を繰り返すが、笑顔で応じていた。

食事メニューの一例

 配膳が終わると、「いただきます」。日常生活が自立している入居者は、それぞれ自分のペースで、食事を楽しんでいる。だが、介護度の重い入居者には、職員による食事の介護が欠かせない。一口ずつ、入居者に合わせて、ゆっくり、しかし確実に口元に運び、「ごっくん」と飲み込むのを確認する職員たち。その表情は優しくも真摯だ。介護の力を実感した。献立は1種類だが、刻み食などにも対応している。

データブック

ホーム名:ボンセジュール中野島
事業主:株式会社ゼクスコミュニティ
運営主:株式会社ゼクスコミュニティ
住所:神奈川県川崎市多摩区中野島3-14-22
電話:044-930-9222
FAX:044-922-0130
戸数:77室 (定員79名 単身者用居室75室/夫婦居室2室※夫婦室のみミニキッチンがある)
居室設備:トイレ(洗浄機能付便座)、緊急用コール、洗面台エアコン、ベッド、寝具一式、TV端子、電話端子
共用施設・設備:食堂兼機能訓練室、屋上庭園、浴室(個浴・檜風呂・車イス対応など)、厨房、共用トイレ、談話コーナー、ファミリールーム、健康管理室、事務室、エレベーター、スプリンクラー、緊急通報装置、火災報知器
費用:入居一時金/前払い分施設利用料)4,800,000〜11,400,000円
月額利用料/管理費(共用施設の水道光熱費・維持管理費と基本サービスに係わる人件費)、食費、施設利用料(専用居室及び共用施設の利用料) 168,000〜336,000円
URL:http://www.bonse-nakanoshima.jp/index.html

● 取材を終えて●

 入居者の定員は79人。だが、取材時点での入居者数は69人だった。「すでに予約で満杯。入居をお待ちいただいている方や、キャンセル待ちの方もいらっしゃいます」と施設長がいう。「入居者に提供するサービスの質を保ちたいので、慎重に対応したいから」という理由だ。また、入居を決めるに当たっては、積極的に体験入居を勧めている。「相互理解のため」だという。

 老人ホームに限らず、人々が集まる場の雰囲気というのは、まさにその場にいる一人ひとりの個性が連動して生まれるものだ。パンフレットを読むだけ、話を聞くだけでは、入居前の想像と入居後の実際の生活に落差が生じる恐れがある。実際に入居してみたものの、自分には合わないと後悔する「老人ホーム選びの失敗例」は、その典型例だ。そういう失敗を避けるためには、体験入居は有効だ。

 実は取材当日は、コムスン・ショックが介護の世界を、いや、日本の高齢社会を揺るがした日だった。信頼。誠実。責任。そんな言葉が脳裏に浮かんでは消えた。法人組織であっても、実際に施設の質を左右するのは、現場をしきる施設長その人の手腕に負うところが多い。「体験入居でありのままを実感して欲しい。その上で、決断して欲しい」という、ボンセジュール中野島の施設長、佐藤さんの言葉に、「信頼」を感じた。この信頼感が、そして入居者やその家族にとっては「安心」につながるのだろう。オープンしたばかりでまだまだ進化発展の途上にあるこの老人ホームに幸多かれと願いながら、帰途についたのだった。

取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)

早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。


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| 2007年07月01日 |
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