
社会福祉法人友和会 ピアポート千壽苑
自宅にいるような、安らぎのある暮らしを実現

東京の通勤圏内でもひときわマンション群が増えているのが
千葉県の県庁所在地でもある千葉市だ。
JR千葉駅周辺には瀟洒な建物が建ち並んでいる。
そんな街の風景の中にさりげなく自然に溶け込んでいるのが
2006年に開苑したピアポート千壽苑。
地域社会との絆を大切にしたシニアライフを
入居者のために実現させたいという思いから生まれた
新しいタイプの都市型老人ホームだ。
海にも近い都市型高齢者施設
●住宅街に溶け込む生活環境●

千葉ポートタワーと隣接するポートパークにも程近い。屋上からは千葉港が見える。
JR千葉駅から高さ125メートルの千葉ポートタワーを目印に、海の方向に歩くこと約15分。それらしき看板を探したが、見当たらない。危うく通り過ぎそうになったときに、「ピアポート千寿苑」と書かれたシンプルな表示板を見つけた。
他のマンション群に自然に溶け込んだ外観にはいわゆる老人ホームっぽさがない。これが特徴でもある。エントランスもまるでマンションのようだ。

往来に面して立つ案内板。

シックな色調のエントランス。
●新しいタイプの施設として全国的に注目されている●
その理由の一つが、施設内に地域住民が気軽に利用できる「地域交流スペース」を設けていることだ。なぜなら、入居者もまた地域住民の一人。同施設で開催するさまざまなイベントや行事に、地域住民にも参加してもらいたい。
そしてまた、地域住民がこのスペースを利用することで、入居者が施設内に居ながらにして社会的な交流ができる場にしたい。そういう願いを込めて設けられた。こういう形の地域社会との交流は、これまでになかったという。
そして、全国的に注目されるもう一つは、同施設が「住み慣れた環境の中で、家族や地域との関係をできるだけ維持しながら暮らす」というコンセプトでつくられ、運営されているからだ。
理念に基づき、社会の求めに応じた高齢者福祉施設の創造
●高齢者のADLと尊厳に配慮した設備●
同施設を設立し、運営しているのは、社会福祉法人友和会だ。1984年から千葉市内で、特別養護老人ホーム、短期入所施設、デイサービス、ケアハウス、ホームヘルプサービス、居宅介護支援、配食サービスなどの高齢者福祉事業に取り組んできた。
その実積と体験の中から、高齢者のためにはもっとこうしたいという反省や希望がたくさん出てきたという。そして、その反省と希望から生まれた、新しい理想の施設をつくろうとチャレンジした結果がピアポート千寿苑なのだ。
それは高齢者のADLと個人の尊厳に配慮した施設内設備に象徴されている。

左麻痺対応のトイレ。

個人の尊厳に配慮した脱衣場と奥の個浴室。寝たきりでも入浴できる特殊浴槽も備えている。
ADLとは「Activities of Daily Living」の略で、「日常生活動作」という意味だ。例えば、トイレ。トイレは各ユニットに身体の左麻痺、右麻痺の方とちらでも対応が可能な配置にしてある。
また、他人に気兼ねすることなく、ゆっくりと自分のペースで入浴時間を楽しめるようにと、浴室は従来の施設に多く取り入れられていた大浴場形式ではなく、個人浴槽を主にしている。しかも、脱衣所もカーテンで仕切れば一人一人のプライバシーが保てる。
高齢者の、一人の人間としての尊厳を大切にしたいという思いから、こうした配慮が生まれたのだ。
●自宅での暮らしに近い環境づくり●

カフェの雰囲気が漂うラウンジ
鉄筋コンクリート6階建ての同施設は、特別養護老人ホーム、短期入所施設、グループホーム、デイサービスで構成されている。1階はデイサービスのフロアで、2階以上が居室フロアだ。
各階を結ぶエレベーターを降りると、そこは街というコンセプト。床に目をやると街路風のデザインが施されている。しかもガラス張りなので、明るい日差しが入り込み、外の景色がまさに街並という感じでこのフロアのストリートにつながっているのだ。
この施設内街路は入居者の生活リハビリの場でもある。その景色を眺めながら、ゆっくり楽しむ散歩がそのまま歩行訓練につながるという具合だ。また、その一角には、家族が訪問した際に友にゆったりとしたひと時を過ごせるラウンジコーナーも設けられている。

居室は全室個室

家族的な雰囲気が漂うリビングとダイニング
施設内街路に面して、ユニットの玄関がある。各ユニットは8〜9室の居室とキッチン、リビング、ダイニング、トイレからなる。居室はいずれも、ベッド、エアコン、洗面台を基本の付帯設備とした居室は、全室個室だ。
使い慣れた家具などを持ち込むことができるので、入居者自身が長年なじんできた日常生活の空間が保たれる。個の空間が保たれる一方で、各フロアには各階ごとに趣向を凝らした共有スペースが設けられている。
入居者同士が集まって食事をするダイニングやテレビを見たり各種プログラムを楽しむリビングだ。一人になりたいときと、大勢で過ごしたいとき。心のままにそんなメリハリのある暮らしができるように配慮されているのだ。それは、好きなように生活できる自宅感覚に通じる。
温もりのある生活を実現する理念
●手づくりの食事と陶器のお茶碗●

昼食のメニュー。

厨房で昼食の準備に忙しい調理スタッフ
自宅感覚を大事にすることは食事の面にも現れている。同施設は、外注ではなく、施設内の厨房で毎食、栄養と味わいに工夫を凝らしながら調理している。
取材当日の昼食は、ごはん、みそ汁、たらの野菜添え、温泉卵、サラダだった。このうち、ごはんとみそ汁は、厨房ではなく、各ユニットのキッチンで職員が作っている。
ごはんが炊ける香りも自宅、すなわち家庭の温もりには欠かせないもの。自宅から、家族から離れていても、こうした温もりが入居者一人ひとりの気持ちを落ち着かせることにつながる。
また、高齢者向けの施設では軽いプラスチックの食器が使われることが多いのだが、ここでは陶器を用いている。これも、自宅感覚を大切にしているからだ。

昼食のために米をとぐ職員

職員の的確で落ち着いた介助でゆっくりと味わう入居者。食事時間も穏やかでなごやかな雰囲気だ。
●高齢者と家族の絆をサポート●
同施設には若い職員が多い。数人のベテランスタッフを中核に、敢えて新人スタッフを集めたという。開設に当たり、新しい高齢者福祉を実現するには、従来の固定概念に縛られない方がいいという判断からだ。
人材育成や介護・介助の向上を考える際の出発点は、「"ふつうの暮らし"を大切にした、自宅のような安心のある施設を実現するにはどうしたらいいか」ということだ。そこから生まれた一つが、看取りの支援だ。医療機関よりも、この終の住処で最期を過ごしたいという入居者、そして家庭的な環境で穏やかに送りたいという家族の希望に応じているのだ。
「ご家族は入居者の心の支えです。それはご家族にしかできないことです。私たち職員は、介護の知識と技術で、高齢者と家族の絆をサポートします」と、同施設のケアリーダーはいう。家庭では介護する側もされる側も疲弊して、家族関係がぎすぎすしがちになることもある。
整った設備と専門職の知恵と技が、きしんだ家族関係を修復することも少なくない。実は、いつでも顔を見ながら話せるようにテレビ電話を設置してあるが、全く使われていないという。家族が頻繁に面会に来るので、必要ないのだ。
うれしい誤算だという職員の言葉と笑顔が、訪問を終えた今も心に残っている。

包帯を巻く職員に「ありがとう」と言葉をかける入居者。こうした入居者の反応が、職員には励みになる。
データブック
施設名:社会福祉法人友和会 ピアポート千寿苑
ホームページ:http://www.yuuwakai.jp/
所在地:千葉市中央区問屋町6-4
TEL:043-204-8400
FAX:043-246-1722
定員:
特別養護老人ホーム[定員:82名(10ユニット)]
短期入所生活介護[定員:18名(2ユニット)]
グループホーム[定員:18名(2ユニット)]
デイサービス[定員:20名/日]
主要施設:
居室・応接室・談話室・ランドリー・浴室(個浴/機械浴)・トイレ・エレベーター・デイサービスホール・厨房・医務室・事務室・地域交流スペースその他
利用料:
入居者の介護度に応じて介護保険適用時の負担額が定められている。詳細については、直接施設まで問い合わせを。
●取材を終えて●
地方出身で東京在住の友人たちが、このところ相次いで親の介護を担うことになった。仕事や家庭の事情で、郷里で親と同居しながらの介護はできない。遠距離介護は大変だ。最初はひたすら親を心配し、できるだけの介護をと思っていても、次第に友人たちも疲弊して来た様子。
そんなある日「やっといい施設が見つかった」と安堵した声で友人から連絡があった。あれこれ報告を聞きながら思い出したのが、ピアポート千寿苑のケアリーダーから聞いた「サポーター」という言葉だ。
整った設備と的確な心身ケアができるプロの手に、大切な親を委ねることができれば、娘や息子には親を思うやさしい気持ちだけが残る。それがいろいろな意味での安堵になるのだろう。友人親子にとって、やっと見つかった施設が、ピアポート千寿苑のような素敵なところであってほしいと思う今日この頃だ。
取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)
早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。
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