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財団法人積善会 介護老人保健施設リバーイースト

穏やかで安らぎに満ちた癒しの環境

介護老人保健施設リバーイースト外観

薫風を心地よく感じながら出かけた先は
神奈川県小田原市の下曽我。
海と山に囲まれた温暖な地で、
“梅の郷”として知られている風光明媚なところだ。
ここにある介護老人保健施設リバーイーストが今回の訪問先。
小川のほとりに広がる緑の中に
瀟洒な建物が見えていた。
広いのは敷地だけではない。
館内にはゆったりと心身を癒す空間が広がっていた。

病院を母体とする介護老人保健施設

●豊かな自然と医療環境の充実●

 日常生活に支援が必要な高齢者の入所型施設にはさまざまなタイプがある。介護老人保健施設とは、介護を必要とする高齢者の自立と家庭への復帰を支援するために、医師による医学的管理の下で、看護・介護・ハビリテーションを提供するほか、栄養管理・食事・入浴などの日常生活援助までの各種サービスを提供する施設だ。

 リバーイーストは東名高速道路大井松田ICから約10分だが、ゴールデンウィークが始まっていたので、電車で行くことにした。小田原で新幹線から東海道線に、そして国府津で御殿場線に乗り換えた。車窓の景色がのどかで、ちょっとした旅気分が味わえる。最寄りの曽我駅からは徒歩3分。小さな川の向こうに鮮やかな緑の芝生が広がり、瀟洒な建物が点在していた。日本では、とくに首都圏ではみられない豊かな空間、美しい景色だ。

自然と調和する施設外観
豊かな自然に建物が調和している

 2000(平成12)年3月に開設されたリバーイーストを運営しているのは、財団法人積善会。精神科を主体とする曽我病院を母体に3法人15施設を擁する積善会グループの中核をなす法人だ。緑の芝生が広がる敷地内に点在している建物群は、認知症病棟を含む病院施設を中心に知的障害児施設、指定介護老人福祉施設ルビーホームなど3法人14施設(1施設は横浜市内にある)。いずれも「スープの冷めない」適度な間隔で建ち並び、入所者によりよいサービスが提供できるように連携している。

 例えば、入所者が受診を必要とする場合、休日や夜間でも曽我病院で診療を受けられる。また、認知症で入院加療が必要となった場合にも、同院の専門病棟で受け入れ可能だ。こうした医療環境の充実が、リバーイーストの特長だ。

● 生活困窮者を救う“無料低額事業”●

館内に掲示されている入所者の作品
館内に掲示されている入所者の作品

 組織がしっかりとしているので、入所者に関するデータもきちんとしている。「入所者の年齢は、65歳から103歳まで。平均年齢は83.9歳です。要介護度は、約8割が3以上で、平均3.6。医療機関を母体としているせいか、医療依存度が高いのも特長の一つです」という、事務課長の説明は明解だ。その説明の中で、「無料低額事業」という言葉が出てきた。

 「認可を受けた病院や老人保健施設で利用できる制度で、社会福祉法に基づいて定められた“無料低額診療制度”というのがあります。経済的理由により適切な医療等を受けられない方々に対して、安心してよい治療やサービスを受けていただくため、無料または低額で診療等を行う事業です。介護保険を含むさまざまな制度改正に伴い、支払い負担額も増加しています。そこで、高齢の生活保護受給者や生活困窮者にも利用しやすいようにと、この制度を取り入れて事業を展開しているのです。2007(平成19)年度は、入所者の延べ人数に対し、16.4%の利用実積がありました」(事務課長)。

 あまり知られていないうえ、利用できる医療機関や施設も少ない。後期高齢者保険制度など、高齢者を取り巻く社会環境の中でも、とりわけ経済的な厳しさが増している昨今、こうした制度が利用できるのは貴重だ。

ゆとりの空間 癒しの環境

訓練に励む男性利用者
1階のリハビリ室は通所リハビリテーションでも利用。「車椅子から、やっと歩けるようになった」と今日も訓練に励む男性利用者

●個室感覚の2人部屋●

 エントランスを入ってすぐのラウンジで概略を聞いてから、館内ツアーに出発した。建物は3階建てで、ロの字型になっている。だから、どの部屋にも窓から明るい陽光が届くようになっている。まず、感じたのは「広い!」ということ。ラウンジ、廊下、リハビリテーションルーム、食堂……。どこもゆったりした空間が確保されているのだ。

ロの字型の建物
ロの字型の建物。窓辺は湘南の海のように波形で美しい

 一番気になるのが居室だが、こちらは広さに加えて前述のようにいずれも窓に面しているので屋内が明るい。ベッドと作り付けの収納ユニット、それにトイレと洗面台というのが設備の基本だ。水回りがオープンになっている施設も少なくないが、リバーイーストでは引き戸付きの個室になっている。しかも、これまた車椅子対応で、スペースにゆとりがあるのだ。居室内の快適さは、入所者の生活の質に大きな影響を与える。利用者の立場をよく考えた作りと配慮だ。

個室の様子

2人部屋の様子
廊下に設けられた明かり取りの先が居室(写真左上)。個室の基本はこのタイプ(写真右上)。トイレと洗面所が共有の2人部屋(写真下)

 居室には、個室のほかに水回りを共有する2人部屋もある。2人部屋とはいえ、プライバシーを尊重する空間が確保されているし、孤独や不安を解消する適度な人気も感じられる。そのため「2人部屋希望の方も少なくありません」と事務課長もいう。

●長い廊下はちょっとした散歩コース●

 2階の一角でにぎやかな笑い声が聞こえる。部屋にお邪魔してみると、89歳の女性が仲良しのお隣さんが元気な笑い声の発信源だった。「いつもお互いに行ったり来たりで、にぎやかにくらしているの」という。部屋は個室タイプで、ベッドのまわりは丹精している花々や自作の手芸作品がいっぱいだ。まさに「マイホーム」という感じだ。

利用者と手芸作品
居室内は宝物でいっぱい。とくに手づくりの手芸作品は館内でもみんながほめてくれる自信作

 心臓にペースメーカーがあり、歩く際には杖が手放せないというこの女性は、「廊下を歩くだけでも散歩になる」という。各フロアはエレベーター前のスタッフステーションを中心に南ウィングと北ウィングに分かれているが、ウィングの端から端までが、長い。50メーターくらいありそうだ。杖をつきながらフロアを一周すれば、確かにいい運動になるに違いない。

一般棟北ウィング
2階一般棟の北ウィング。長い廊下はいい運動コースだ。

 住まいがあり、隣人との近所付き合いがあり、食堂やラウンジ、理美容室などの公共スペースがある。リバーイーストには、入所者たちのコミュニティがある。つまり、長い廊下は散歩ルートであり、コミュニティのメインストリートでもあるわけだ。こんなふうに、個人の空間とコミュニティ空間が調和している館内は、「ゆとりの空間」であり「癒しの環境」というにふさわしい。

理美容室の様子
1階には理美容室があり、月に2回、希望者を対象に開店する

スタッフが生み出す穏やかな雰囲気

●ゆっくりと味わう食事タイム●

 食事はフロアごとに食堂に集まってとることになっている。要介護度が高いということは、入浴と食事の介助が不可欠という利用者が多いことを示している。だが、このリバーイーストでは、そういう場面に付きものの慌ただしさを感じさせない。逆に、スタッフも入所者も、つまり食堂に集まる全員が、ゆったりとして、心の穏やかさを漂わせているのだ。なぜだろう?

ランチメニューと実習学生
取材当日のランチメニュー(普通食)。職員の指導の元で食事介助をする実習学生(積善会看護専門学校)の表情も優しい。食堂にはゆったりとした雰囲気がある

 「介助しながらの食事には時間がかかります。ですから、全員一斉に食事を始めると、目配りも気配りも大変になってきて、ケアも慌ただしくなりがちです。そこで、介助の時間を確保するために、食事の開始時間を2回に分けることにしたのです」と説明してくれたのは、介護主任だ。

 「例えば昼食は正午ですが、第1スタートを30分早くする。マンツーマンで、しっかりと目配り気配りしながら、食事介助をします。その後、自立している人や介護度の低い人の食事を始めると、利用者はもちろんスタッフも落ち着いて全体のケアをすることができます」(介護主任)。

 慌ただしさは、ケアの質低下につながりやすい。その解決策が、開始時間の工夫というわけだ。そして、これはとても大事なことだ。慌ただしさ、忙しさは、スタッフを疲弊させるだけでなく、入所者の尊厳を冒すことにことにもなりやすいからだ。

●質の高いケアを実現するために●

 介護支援に対するリバーイーストの理念には、3つのキーワードがある。質の良さ、心の温かさ、そして信頼だ。これを具体化するための基本は「入所者の立場に自分の身を置くこと」だと介護主任はいう。それは自身が体験したことでもある。

スタッフステーションの様子
スタッフステーションの様子

 「勤務中に急病で倒れ、しばらく入院生活を送ったことがあります。自由に身動きできない辛さ、一挙手一投足に手助けを必要とするときの不安や、支援を求める際の気後れなど、患者体験で入所しているみなさんの心の内側にあるものを知りました。遠慮なく支援を求められる雰囲気づくりを心がけ、声をかけられる前にケアを提供できるようにしたい。私だけでなく、職員全体がそういう思いで研鑽を積みながら、ケアに取り組んでいます」と介護主任はいう。

 この真摯な思いが、リバーイーストを穏やかで安らぎに満ちた癒しの環境にしているのだろう。そう思った。

データブック

施設名:介護老人保健施設 リバーイースト
開設・事業主体:財団法人積善会 
住所:神奈川県小田原市永塚344-1
電話:0465-42-8006
FAX:0465-42-8009
E-mail:CBD01785@nifty.com
URL:http://soga-hp.com/
定員:90名(このうち認知症専門棟46名、ショートステイを含む一般棟は44名))
構造規模:鉄骨鉄筋コンクリート造 地上3階建(個室数30室、2人室12室、3人室12室)
敷地面積:9754.45平方メートル
延床面積:5724.72平方メートル
主要室名:居室・面接室・浴室(個浴/機械浴/一般浴)・トイレ・機能訓練室・食堂・理美容室・医務室(看護師常勤)・スタッフステーション・事務室
利用料:入居者の介護度に応じて介護保険適用時の負担額が定められている。詳細については、直接施設まで問い合わせを。

●取材を終えて●

 黄金連休に読もうと思っていたのが「おひとりさまの老後」(上野千鶴子著)だ。未婚でも既婚でも、年を重ねて行けば誰でも最後は一人になる。高齢期のシングルライフをいかにすごすか、これは大いなる関心事だ。

 年金問題や格差社会など、先行きを不安に思う材料が多いことも、こうしたテーマに関心を持つ理由だ。そんなときにリバーイーストを訪ねて実感したのは、高齢者にとっての安心は何か、ということだった。

 一つは、経済問題の解決だろう。金の切れ目が命の切れ目といても過言ではないくらい、今の日本は高齢者に厳しい状況だ。そういう意味で、リバーイーストで無料低額診療制度を知ったこと、実際にそれを取り入れているということは、救われる思いだった。国としてはこの制度を抑制する方向にあるようだが、このセイフティーネットはなくさないでほしいと思う。

 それから、もう一つ大事なのは、尊厳だ。人は誰しも自尊心を持って生きている。高齢者の尊厳を大事にするということは、この自尊心を傷つけないということだ。リバーイーストの食事風景を見ながら、穏やかさの源にあるのは、これだと思った。当たり前のようだが、人を人として遇することが、尊厳につながる。

 ここなら安心して生活できるかもしれない。自分自身の「おひとりさまの老後」を想像しながら、リバーイーストでそんな安心感を得たのだった。

取材した人:茂木登志子(もぎとしこ)

茂木登志子早稲田大学教育学部卒業。毎日新聞社出版局「毎日グラフ編集部」を経てフリーのライター&エディターに。活動テーマは「人と地球の健康」。トラベルジャーナル社「有機野菜が子どもを守る」、日本医療企画「介護保険の上手な選び方」「10兆円介護ビジネスの虚と実」、学研「食べて治すうつ症状」などの取材・執筆に参加。70代の母親と8歳の愛犬という高齢家族と暮らしている。

| 2008年05月21日 |


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